【第1章】マンション管理会社総論
【第2章】管理員に必要な予備知識と心構え
【第3章】マンションから求められている管理人像
【第4章】管理人業務の基本
【第5章】管理員の実務
【第6章】ルール違反者やクレーマーへの対応方法
【第7章】管理員業務における重大ミスを未然に防ぐ
【第8章】管理委託契約書の遵守と契約外事項の対応
【第9章】マンション管理の基礎知識
管理員は管理会社の一員
- 住人に喜ばれたい
- 老後の健康のため
- なんとなく楽そうだから
管理人さんの志望動機が何であれ、管理会社の一員になった以上はマンション管理のプロとしての自覚をもつ必要があります。
管理員は管理会社の社員
管理会社の社員(管理組合と直接契約の管理人さんもいます)である以上は自らの会社の不利益になるような発言は慎むのは当たり前のことです。
よくある悪い例がマンションの住人と管理人さんが一緒になって管理会社を批判するケースです。「うちの担当者は対応が悪い」「うちは金額が高すぎる」このように自分が所属する会社を批判することは無責任な発言といえるでしょう。こうした言動は管理人さん自身の信頼を損なうことにもなりかねません。
会社の悪口はご法度
仮に、マンションの住人が管理会社に不満を募らせているようなら、こうした不満を管理人さんが管理外車の代表として真摯に受け止めることです。
そして、事実を物件担当者に報告をおこない、会社として住人からの信頼を回復するようにつとめるのが管理人さんのお仕事です。住人の不満の声をひとつずつ拾いあげて改善していくことで、より良いマンション管理につなげます。
管理会社の内部組織
管理人さんが所属する管理会社の組織は、多くの部署と人員によって構成されています。管理人さんと最もかかわる機会が多い物件担当者が所属するのが管理部門です。そして、その物件担当者を補助する役割を担うのが事務担当者、緊急対応の窓口としてコールセンター、技術的なことをサポートする技術部門などが置かれています。
そのほかにもコンプライアンス部門や会計部門などがあり、さらに管理会社の傘下には、子会社や下請け業者が控えています。
管理人さんはマンションに配属されたあとは会社に出勤する機会は少ないのですが、最低限どの部署がどのような役割を持っているか把握しておきましょう。例えば、マンション内で漏水が起きたときには物件担当者の他にコールセンターに連絡すべきです。
また、マンションの住人から管理費の引落口座について質問があった場合には物件担当者よりも事務担当者や会計部のほうが詳しいことも多いでしょう。
管理会社の部署ごとの仕事内容を把握することで、管理人さんにとっても働きやすい環境を築くことが可能です。
物件担当者(フロントマン)との関係
管理人さんが最も接する機会が多い管理会社の社員が、フロントマンと呼ばれる物件担当者です。フロントマンは通常15棟前後のマンションを任されます。
仮に担当する15棟のマンションの内、10棟に管理人さんが勤務しているとすれば、フロントマンひとりがその10人の管理人さんの上司ともいえる存在になります。
フロントマンと良い関係を築く
管理人さんは日々の出来事をフロントマンに逐次報告することが必要ですが、仮に管理人さん一人がフロントマンと電話で、1日10分のやり取りをすれば、10人の管理人さんとの電話だけで1時間40分かかります。
「報告」「連絡」「相談」は仕事をする上での基本事項ですがフロントマンの業務負担を減らすためにも管理人さんからの連絡事項は短時間で終えるように電話の前に要点をまとめなどの事前準備や、ファックスやメールを利用するなどの配慮も必要です。
また、管理会社のフロントマンの多くは管理人さんからすれば子供のような年齢の方が多いので、生意気だったり礼儀知らずであったりと管理人さんからすれば頼りにならないという感情を抱くケースも多いようです。
しかし、管理人さんと同じようにフロントマンも業務に追われています。平日は、住人からの問い合わせ対応や理事会総会の準備、土日は理事会や総会に出席します。そのあたりも考慮に入れて管理人さんがフロントマンを育てるような温かい気持ちで接してあげてください。
管理員業務はサービス業
- 休憩時間も見られている
- 身だしなみを整える
- 住人がどう受け止める意識
マンションの住人は程度の差こそあれ自分たちの暮らすマンションに品格を求めています。当然、管理人さんにも同様のものを求めます。
せっかく立派な外観や設備を持った自慢のマンションに友人を招いても、管理人さんが管理室でマンガや競馬新聞を読んでいる姿をみられたら残念な気持ちになるでしょう。
たとえ、それが管理人さんの休憩時間であっても同じことです。極端に言えば住人は、自分たちのマンションの管理人さんには休憩時間であっても管理室でゆったりと身体を休め静かに書類整理をするような人物を求めています。
会社のルール上は休憩時間をどのように使おうと問題がなくても、マンションにお住まいの方がどう受け止めるかがサービス業では肝心です。
「休憩時間だから、何をしても良い」こういう思考を持った方は、そもそもサービス業には向いていないといえるでしょう。
管理人の仕事はサービス業だと理解していても、年配の管理人さんの中には接客を苦手にする方も多いでしょう。
住人に笑顔であいさつをするなんて簡単なことであっても人によっては難しいということもあります。
コミュニケーションが苦手な管理人さんがマンションで受け入れてもらうために簡単にできることは、制服を清潔に保って身だしなみを整えることです。持ち歩くタオルは、奇麗なものをつかってください。これだけでも、住人からの印象は大きく変わっていきます。
住人が好意を持って管理人さんに接するようになってきたら、徐々に笑顔であいさつを交わせるように努力をしてください。
意思決定は管理組合がおこなう
管理人さんも仕事に慣れてくると欲が出てきて「あそこにチラシを捨てるためのゴミ箱を置いたら便利だ」などのプラスアルファの提案をしたくなってきます。
管理人さんの判断で勝手に共用部分にゴミ箱を置くことはできないので、物件担当者をとおして理事会に提案をおこないます。しかし、その提案を取り入れるかどうかは理事会次第です。仮に、それが客観的にみて良い提案であっても住んでいる方にとっては違う見方もあります。
チラシは各々がお部屋で捨てるべきものだ
ゴミ箱に放火されて火事になったら大変だ
立場がかわればそれぞれの意見は違うものです。いずれにしても、マンションは住んでいる方のものですから、せっかく管理人さんが良かれと思って提案したことであっても、それを取り入れるかの最終判断はマンションにお住まいの方がおこなうことになります。
管理人さんの意にそぐわない結果であっても理事会の判断を素直に受け入れるようにしましょう。
管理組合の費用負担に注意
誰だって、自分の財布に直結することには敏感になります。マンションにお住まいの方にとって管理組合の支出は、自分のお財布から支出することと同じことです。
年に一度おこなわれる総会では、管理組合の資金の使い方ひとつで管理会社を巻き込んで大荒れになることもあります。
管理人さんもある程度仕事に慣れてくると、物件担当者との信頼関係の中で裁量の幅が広がっていきます。そこで、一つだけ注意。管理組合に費用負担が発生することについては、物件担当者に事前確認を怠らないようにしてください。
管理費からの支出は事前確認が必要
例えば、エレベーターのカゴ内の照明が消えていた場合には、管理人さんが直接エレベーター保守会社に修理を依頼しても管理組合の費用負担はありません。けれどエントランスの鍵が壊れていて業者を呼べば、管理組合が修理費用を負担することになります。
こうした費用負担の区分は、絶対ではなくて契約の内容や業者によっても異なってきます。
したがって、管理人さんが直接修理などの対応を業者に依頼する場合には、必ずその業者に対して「対応は無料ですか?」と修理費用について確認をとる必要があります。仮に有料であれば物件担当者が理事長に実施についての了承を得るのが通常です。
事後承諾で管理組合のお金を使ってもよいのは、緊急性があって理事長の許可を事前に得るのが困難なときだけです。このような場合には物件担当者の判断で、管理組合の許可なく有料の対応をおこなう場合もありますが、原則として管理人さんの判断で管理組合のお金を使うことはできません。
善意の行いであっても
管理室やエントランスに花や絵画を飾ってくれる管理人さんのお気持ちはとても素晴らしいものです。
ただし、マンションの住人の中にはいろいろな趣向の方がいます。飾りっ気のないシンプルな生活を期待する方も多いものです。
こうした善意に対する意見は住人の中でも分かれるものですが、いずれしても、マンションは住人のものであって管理会社のものではありません。また、共用部分を個人の裁量で許可なく使うことはできません。
したがって、こうしたちょっとした心遣いをおこなうときには、管理人さんが十分マンションに受け入れられるようになって、マンションの雰囲気や住人の好みが理解できるようになってからおこなうようにしましょう。
また、管理人さんの善意の行為であっても反対意見がでた場合には、そっと諦める心づもりも必要です。
健康管理と事故防止
- こまめな水分補給
管理員業務は、規則正しい仕事ですので取り組み方次第では健康面でプラスになること多いと思います。しかし、残念なことに管理人さんの仕事中の病気発症や事故は数多くあります。
健康管理については勤務時間外での取り組みが大切なことは言うまでもありませんが、管理員業務においても夏場は水分の補給をこまめにおこない、タイムスケジュールを調整して暑い時間帯は外作業を控えるといった工夫によって、多少なりとも病気を発症するリスクを下げることが可能でしょう。
- 脚立の最上部に乗らない
- ヘルメットをかぶる
事故に関しては会社のルールを厳守することが怪我を防ぐためにもっとも重要です。特に管球交換の際など高所作業をする場合には脚立の最上部に上ったり、設備の巡回点検の際にヘルメットの装着を怠ったりといったことのないように十分に注意しましょう。
管理員業務の中で危険を感じる作業がある場合には、物件担当者に報告をして改善するように努めましょう。