そんなにマンションの役員ってキツイのでしょうか
分譲マンションでは、輪番票(順番)や抽選で役員(理事)になることが多いと多いでしょう。もちろん、ふさわしい方の「立候補」や「推薦」で決まるのがマンションにとっては、望ましい事とは思いますが、中々そういうわけにもいきません。調査でも順番で役員を決めている管理組合が約75パーセントです。
専門家が理事になる場合もあるが…
一部の先進的な管理組合やリゾートマンションなどでは、区分所有者以外の外部の専門家を理事長に迎える「第三者管理方式」を採用している場合もあります。しかしほとんどは、区分所有者が管理組合の役員に就任しています。
「次期役員候補だと管理会社に言われたが、仕事の都合で役員になれない。身体の具合が悪くて役員がつとまらない。そもそもやりたくない。」こんなセリフをマンション管理の現場にいるとよく聞きます。
管理組合役員になったときの不安
マンション管理組合運営の経験のない方が必要な予備知識の用意がないまま役員候補に選ばれれば以下のような不安を抱くのも致し方ありません。
- 1.大規模修繕工事の進め方が分からない
- 大規模修繕工事は、どういう手順でどの業者を選んだら良いのか分からない。
- 2.管理費未納者の対策が分からない
- 支払の督促が必要とは思うが、同じ屋根の下暮らす者同士できるだけ角が立たないようにしたい。
- 3.役員をずっと続けることにならないか不安
- 役員のなり手不足の問題。来年になって、新しい役員が引き受けてくれるか不安である。
- 4.設備の故障が発生しても専門的なことはわからない
- 修理が必要だとわかっていても補修費用が適正であるか判断がつかない
役員になると良いこともある
理事になると、良い面も当然あります。定例の理事会で自分たちの暮らすマンションのルールやマナーを、好むと好まざるとにかかわらず再確認することとなります。例えば、毎月支払っている管理費等がどの様に使われて、管理会社はどんな仕事をしているのか。そして、マンションの設備等も理解することによって、マンションに対して一層の興味や愛着がうまれてきます。
役員同士で仲良くなることも!
何よりマンション内のトラブルや問題を解決するのに、他の役員のみなさんと協力し合うことで、今までは顔はみたことあるだけで名前や素性をもわからなかった方々と知り合いになって、マンション内に頼りになる仲間が増えることでしょう。
実際に、理事の皆さんが理事会では充実した議論をおこなった後に、そのままみんなで近所のファミレスにランチに行くようになって、それまで顔も知らなかった理事同士がお友達になったマンションを数多くみてきました。
理事会にクレームがつくことも多い
一方でネガティブな面を考えてみます。マンションは、一戸建てとは異なり、年齢や性別、価値観等のまったく違う住人が暮らしています。ですからどんな方と一緒になるかもわかりません。どんな素晴らしいマンションでもトラブルは必ず起こるし住人から理事会に対してクレームが寄せられることもあります。
理事会へのクレームの内容が合理的なものであれば理事会で話し合って対応策を考えればよいのですが、中にはいわゆる「クレーマー」と呼ばれる方からの理不尽な要求も多いのが現実です。
役員になるのを断ることが出来る?
毎月休日におこなわれる理事会も負担になります。せっかくの休日に、せまい管理室に集合して「居住者間の騒音問題」など、解決する特効薬がないことを議論するのは決して楽しいものではありません。いっそのこと「役員になるのを拒否しよう!」と考える方も大勢います。実際のところ、辞退したからといって法令で罰則があるわけではあいませんが、管理組合によっては、ペナルティーとして数千円~1万円程度の負担金を支払うと定めているケースがあります。
理事経験についてのアンケート結果をみると
アンケート集計結果
子どもを通した知り合い以外とは、なかなか交流する機会がなかったので、同じマンションの中に知り合いが増えたのが、よかったです。少しでも住みよいマンションにしたいという思いは共通で、皆さん前向きな方ばかりでした。順番に全員が理事になるという方法は、住民の意識を高めるためにも、いい方法だと再認識しました。
特にありませんが、普段あまり話さない人達と一緒に理事をしたので以前より交流出来るようになった点が良かったと言えます。規模の小さいマンションですが、せっかく同じ建物に住んでいるわけですからもっと交流をしてもいいと思えるようになりました。また中には私が住むずっと以前から住んでいる人もいて、昔の出来事や背景が知れたのも良かった点です。
マンションの役員(理事)になったらこれからはじめる
マンションの理事の仕事は多岐にわたります。居住者からのクレーム対応や突然の設備の故障など。でもそれほど心配することはありません。管理会社に業務を委託しているマンションであれば管理会社の担当者(フロント)がサポートしてくれますし、日常的なことは管理人さんが心強い味方です。そして、いざとなれば外部の専門家(マンション管理士)などの助けを求めることだってできます。
毎月実施されることの多い定例の理事会では住人の代表として日常的な管理業務をおこないます。理事会の具体的な業務には年間行事として「定期総会」や「親睦会」等の開催のほか、「管理費滞納問題の対応」「住民からのクレーム処理」「建物の修繕」などの対応があり、これらの業務を管理会社と協力しておこなっていきます。
役員(理事)になったらやるべき5つの基本事項
- 他の役員(理事)の方との連絡方法を確認する
- 理事同士が連絡できなければ、何かマンションでトラブルが起こったときに迅速に対応することができません。メールや電話番号等を記載した役員名簿を作成しましょう。ただし、個人情報を提供するのを嫌がる方に無理強いするのは望ましくありません。
- 自分たちの暮らすマンションを隅々まで見てまわる
- 意外と自分たちのマンションのことを知らないことに驚くはずです。管理会社や管理人さんにお願いして、(安全を確認した上で)屋上にあがるなど、マンション内を巡回してみると、今までとは違ったマンションの部分がみえてきます。
- 自分たちのマンションの管理規約や使用細則を読みなおす
- マンションのルールである「管理規約」や「使用細則」をあなた自身は厳守していますか?共同生活にはルールがあります。マンションで暮らす方が全員がルールをしっかりと理解することが大切です。もし理事が管理規約を読んだことがなければ、総会での質疑で恥ずかしい思いをするかも知れません。
- 管理会社との決め事「管理委託契約書」を確認する
- 一般的な分譲マンションでは、業務のほとんどを管理会社に委託しています。管理会社が行なっている業務の内容を正確に把握することが、自分たちのマンションの管理のことを理解するはじめの一歩です。管理会社の業務に満足していなければ理事が管理会社に改善を申し入れることになりますが、その際に管理組合と管理会社が提携している契約書の内容をしている必要があります。
- マンション管理で起こるよくあるトラブルを知っておく
- マンションは共同生活の場ですので、「管理規約」や「細則」などでルールを定め、一定の制限を設けています。しかし、いくら管理規約や細則があってもルールを守らない居住者などの行動などによりトラブルは発生します。 マンション管理のトラブルで多いのは「騒音」や「ペット飼育」「管理費滞納」などの問題です。 居住者間のトラブルについては、当事者間で解決するのが原則ですが、それでも解決しない場合やこじれてしまった場合には、理事会が対応しなければならないケースもあります。役員(理事)になったら、マンション管理よくあるトラブルを事前に学ぶことで自分たちのマンションでこうしたトラブルが発生しないように防止策をおこなうことが可能になります。
マンション管理組合の役員にたずさわる方ににとって、心得ておくべき予備知識にはいくつかのものがあります。こうした知識なしにマンション管理組合の運営に当たっても、別に法律違反で処罰されることはありません。
しかし、ある程度の予備知識さえあれば避けられるはずのトラブルに直面して苦労している管理組合の実情をみれば、最低限度の予備知識がどれほど重要な意味を持っているかがよく分かります。
管理組合の理事会の役割はマンションでの安全で快適な暮らしを守り、そして資産としての価値を保ち続けることです。そのためにはまずは自分たちの暮らすマンションがどういう状況なのか様々な観点からチェックをすることが重要になります。
共用部分の最近の利用状況や、建物や設備などの状況について気になる点はないか?こうしたことについて関心を持って調べてみることが、まずは役員になって最初にすべきことです。
マンションの役員(理事)に必要な知識
分譲マンションを購入すると、住戸(専有部分)を目的とする「区分所有権」と、その敷地である「敷地利用権」を同時に取得することになります。一方で、共用廊下、エレベーター、建物の基礎、壁などは区分所有者全員の共有となります。
こうしたマンション特有の仕組みやルールを理解することが理事の仕事を行う上で身につけるべき基本的なことです。また、マンションの管理規約は、マンションの所有者(区分所有者)だけではなく、賃貸で暮らす方を含めた分譲マンションに生活するすべての方が守るべきルールブックです。理事の仕事には、管理規約などのルールを広報や遵守させることも含まれます。
マンション管理組合の仕事の基本
- 【ソフト面】マンション内でのトラブルの解決や未然防止
- マンション内でルールに不足があったり、ルールの周知がおこなわれていないとトラブル発生につながります。例えば、理事会でペットの飼育や騒音の問題が発生しないように規約や使用細則などでルール作成を検討するとともに、マンションの住人にルールを守るように啓蒙をおこなうことが大切です。
- 【ハード面】マンション建物の維持管理をおこなう
- 理事会ではマンション内の点検や修理について管理会社と協力しておこなう他、大規模修繕工事の際には、理事会だけでは不安がある場合には必要に応じて大規模修繕委員会を立ち上げ、理事会と大規模修繕委員会と協力して修繕工事を成功に導きます。
- 【お金の管理】マンション運営に大切なお金をまもる
- マンション管理に必要不可欠なお金は、区分所有者全員から管理費や修繕積立金として毎月徴収します。その大切なお金が不正に使われないようにチェックするのも理事会の仕事です。また、定期的に実施する大規模修繕工事に備え長期修繕計画(長計)をつくり、その計画に基づいて修繕積立金の額を適切に設定して不足に陥らないようにすることも重要な仕事です。
理事に必要な知識
マンションの建物や設備は、専門家が法令に基づいて実施する法定点検のほか、自主点検、臨時点検などが行われます。これらの点検等で不具合があれば、管理会社は理事会に対して状況を報告します。緊急で補修が必要な箇所については理事会で話し合いをして迅速に対応する必要があります。
ですからいくら管理会社がきちんと仕事をこなしても、理事会での業務が停滞してしまえば管理を十分に行うことができません。こうならないためにもまずは管理の主体は「管理組合」や「理事会」にあるということを理解した上で管理に関する最低限の知識を学んでいくことが重要になります。
理事の知識1│マンションの専有部分と共用部分を理解する
マンションは、専有部分と共用部分の2つの部位に分かれているのが特徴です。マンションでのトラブルの根本には、専有部分と共用部分の区分けが難しいということがあげられます。区分けは、原則として管理規約に記載されています。役員(理事)なったらまずは管理規約を読んで専有部分と共用部分の区分けを理解しましょう。
理事の知識2│マンション区分所有法という法律
マンションの基本的事項は、マンションの憲法といわれる区分所有法に定められています。マンション毎に自由に管理規約を定めることはできますが、区分所有法に反するルールは認められません。ですから、管理規約の変更などを理事会でおこなう場合には、役員(理事)なども最低限の区分所有法の知識が必要になります。
理事の知識3│管理規約でマンション個別のルールをつくる
マンションの管理規約は、マンションのルールブックに相当します。この管理規約は、所有者だけではなく同居している家族や賃借人も守るべきものです。理事の仕事には、管理規約などのルールの変更を検討したり遵守させるための広報をおこなう必要があります。ルール違反者には理事会が改善を要求しましょう。
https://www.zenkoku-mankan.org/rule/
理事の知識4│マンション管理を行なうのは管理組合
マンションを購入すると自動的に管理組合員になります。自治会などとは違って、嫌だからといって自由に退会することはできません。マンションの管理組合は共同でマンションの維持管理を行うための組織です。マンションの管理では管理組合という言葉が頻繁にでてきますので、しっかりとその役割を理解しましょう。
理事の知識5│重要なことは、総会の決議でおこなう
分譲マンションでは、マンションの運営に関する重要な事項は、総会(集会)の決議によって決められます。しかし、残念なことに多くのマンションでは、総会の出席率が低いのが実情です。そのためには、役員(理事)は、総会の出席率を少しでもあげるための努力をおこなうことが必要です。
補足│マンション管理士などの専門家に協力を求める
理事になって、理事会の活動をおこなっていくと、管理会社では対応できないさらに専門的な知識が必要な場面も数多くあります。また、管理会社の対応に不信感を抱くこともあります。このような場合には、マンション管理士等のコンサルタントの活用を検討します。
- Q理事になったので法律や規約の勉強をしたいのですが?
- Aまずは、自分たちのマンションの管理規約だけは目を通しておきましょう。次に標準管理規約を、できれば解説書で学びましょう。区分所有法やマンション管理適正化法は時間があれば目を通しておいても良いかもしれません。
この記事のまとめ
マンション管理組合の仕事は、よほど規模の小さいマンション以外では区分所有者全員でおこなうことは現実的ではありませんし、あまり多くの方が実務に携わってもかえって混乱してしまいます。そこで、理事会が区分所有者の代表として管理業務をおこなっていきます。
理事会は理事で構成されますが、マンションを購入した以上は特別な事情がなければ、いずれは理事に就任することになります。初めて理事になった場合には不安もあると思います。しかし、理事だけでマンション管理の実務をおこなうわけではなく、ほとんどの場合はマンション管理会社に業務委託しているため管理会社と協力しながら進めていきます。
(一部のマンションでは自分たちですべての管理業務をおこなう自主管理をおこなっているケースもありますが、現在では住人の高齢化などの影響もあって自主管理をおこなうマンションは減少傾向です。)
役員(理事)からすれば、マンション管理の専門的な知識を持っていなくても管理会社のサポートを受けられるのであまり心配する必要はありませんが、すべてを管理会社任せにしないことが適正な理事会運営の基本です。そのためにも管理組合の役員になったら基本的なマンション管理の知識を身につけることも重要です。
そして、理事会だけでは手に負えないことは、「マンション管理士」等の外部のコンサルタントなどの専門家の知識や経験をうまく活用しながら業務をすすめることも大切なことです。