マンションの高齢化の実態
マンションストックは令和2年末で675万戸に達し、生活の重要な基盤となる一方で、高経年のマンションも急速に増加しており、いつまで快適な生活が続けられるかという不安をお持ちの方も多くなっているのではないでしょうか。
住人の高齢化も進んでおり、国土交通省による調査では「分譲マンションの世帯主の年齢」について、平成11年度から平成30年度の推移をみると70歳以上の割合が年々増加を続けている一方で、30歳以下の割合が減少しており、マンションの住人の高齢化が進んでいることがわかっています。築年数の古いマンションではさらに高齢化は深刻で、昭和54年以前に供給されたマンションでは「70歳代以上」の割合は47.2%となっています。
高齢化マンションの予防の難しさ
国土交通省が実施した平成30年度マンション総合調査によると、世帯主の年齢は「60歳代」が27.0%と最も多く、つぎに「50歳代」が24.3%、「70歳代」が19.3%、「40歳代」が18.9%、となっています。
管理組合の高齢化対策
若い世代が住みたくなるような、マンションにすることが高齢化への最も重要な予防策です。マンションで生まれ育った子供たちが、そこに住まい続けたくなるようなマンションであったり、また、若い世代が購入したくなるようなマンションを目指しましょう。
総会でお茶を出すなど小さなコミュニケーションからはじめる
魅力的なマンションにするための努力をしている管理組合も数多くあります。例えば管理組合主催でイベントやサークルをつくってマンション内のコミュニティを強化を図るなどの施策です。
しかし、注意したいのはこうした取り組みは、そこで既に暮らしている高齢者にとっては魅力的なことであっても、これからマンションの購入を考えている若い世代にとっては人間関係が煩わしいことで、かえって逆効果になることもあります。
若い世帯にはコミュニティの無理強いは逆効果
若い世代にとっては、駅からの距離であったり建物が近代的といったことがマンションの価値であって、マンション内での積極的なコミュニケーションは求められていない傾向があるからです。インターネットやSNSが若い世代の価値観を変化させ、物理的な距離が近い方より、趣味や価値観のあった仲間との時間を大切にしたいという考え方が一般的になっています。
本当に若い世代をマンションに呼び込みたいというこであれば、高齢者視点ではなく、若い世代をどのように取り込めるのかを、いってみれば経営的な発想で検討していことが大切でしょう。
マンションの高齢化による問題
国土交通省が実施した平成30年度マンション総合調査によると、マンション管理組合を運営していく上での将来の不安な点については「区分所有者の高齢化」が53.1%と最も多く、つぎに「居住者の高齢化」が44.3%となっています。
問題1│管理組合運営の不活性化問題
マンション管理組合の運営は、これまでは理事会を中心とした自らの「自治」に重点が置かれてきました。区分所有者による理事会が主導して適正に管理していくことが求められています。しかし、理事会の運営を適正におこなうためには、周囲の人々との利害を調整するような調整力・折衝力も求められ、誰にでも担い得る簡単な作業というわけではありません。
ところが、居住者の高齢化が進み、これらの理事会運営を積極的に担える人が少なくなってくるという問題が生じます。その結果として、管理組合の活動が滞ったり、管理会社や業者任せになってしまうなどの弊害が生じています。
問題2│経済力の低下と消極的な管理へ
一般的に、高齢者になると収入は年金収入のみとなり、現役世代に比べれば年収が低下するという傾向があるでしょう。その一方で、マンションは高経年になるほど、修繕の必要性が増大していきますので管理にかかる費用が増加していきます。
そのため、管理費や修繕積立金の負担額を増やしていくことが必要となりますが、住人の収入が減っているのに加え、各々の人生プランにおいてあと何年もないから特に将来を見越した修繕をする必要がないといった消極的な思考から管理運営を足並みを揃えることが困難になっています。
この記事のまとめ
マンションに高齢者が増えてから「高齢者が中心の理事会」で、高齢化対策をおこなうことは困難になります。これは、前述の通り若い世代の価値観は大きく変化しているからです。
少なくとも同じマンションの建物内に住んでいるということだけで「若い世帯が高齢世帯を支える」という発想では、若い世代にとって何の魅力も感じないでしょう。
こうした世代間のギャップを埋めるためには、若い世代の価値観を管理組合運営に取り入れることが重要なことであり、理事会だけでは難しいということであれば、積極的に「外部のコンサルタントの支援」を受けて、経営的な視点で管理組合運営に取り組む必要があるでしょう。