コンクリート内に雨水を浸透させないことが重要
マンションでは、居住年数が経つにつれて家族の生活様式、意識、ライフスタイルが徐々に変化し、また家族の成長・家族構成も変化します。加えて、建物自体も経年による劣化は免れず、各種施設には老朽化が忍び寄ることになります。
いくら頑丈なマンションであっても、風雨や紫外線の影響で経年劣化は進行していくため、やがては修繕や改修といった対応を迫られます。マンションの外壁が「タイル貼り」や「塗装仕上げ」になっているのは、単に見栄えを良くするだけでなくコンクリートの躯体を保護する目的があります。
「壁面のひび割れ」や「屋上の防水層の亀裂」などを放置すると、そこから雨水がコンクリート内部に浸入して鉄骨に錆びが生じます。こうなると建物の耐久性に悪影響を与えかねません。
したがって建物を安全に使っていくために、劣化が初期段階にある内に、外壁や屋上防水の修繕を計画的に実施していく必要性があります。
鉄筋コンクリートの特性について
分譲マンションは、鉄筋コンクリート構造であることが一般的です。鉄筋コンクリート構造は、「鉄筋」と「コンクリート」のそれぞれの特徴によって頑丈な構造となっています。鉄筋は、引っ張る力に強く、コンクリートは圧縮に強いという利点を活かしています。
鉄筋コンクリートの建物は、木造住宅に比べ地震や火災に非常に強い優れた性能を持っています。一方で、鉄筋コンクリート構造の欠点は、コンクリートはセメントと砂と砂利に水を混ぜ合わせてできたものであるため乾燥によって収縮し、ひび割れが発生し易いことです。ひび割れが大きくなると、そこから雨水が浸透し、コンクリート内部の鉄筋を錆びさせ、錆の膨張によってコンクリートが破壊(爆裂)されることがあります。
建設当初のコンクリートはアルカリ性を有しているため鉄筋の発錆を防いでいますが、経年とともにコンクリート表面から次第に中性化します。この中性化したコンクリートに雨水が浸透することで鉄筋が錆びて躯体の強度低下につながります。
したがって、鉄筋コンクリート構造のマンションを永持ちさせるには、外壁にタイルや塗装、屋上防水によって、コンクリート内部への雨水の浸透や中性化を防ぐことがポイントなります。
なお、コンクリートのひび割れは、幅が0.2~0.3ミリ以上になると雨漏りがする恐れがある危険信号とされ、外壁を塗装するときは小さなひぴ割れも含めて補修が必要です。補修方法には、ひび割れ箇所に樹脂を注入する方法や、ひび割れの幅が大きなもには、ひび割れ箇所をV字型カットして、そこにシーリング材を充填する方法などがあります。
「ライフスタイル」や「社会環境に変化」にも対応が必要
さらにマンションでは、住人のライフスタイルの変化にも対応していく必要があります。たとえば、築年数の経過と共に住人も高齢化が進むためバリアフリー化を目的に、「スロープの設置」や「手すりの追加」なども大規模修繕に含めるか検討が必要です。
また社会環境の変化とともにマンションに求められる設備も、より高度化しています。より便利な暮らしに対応した「インターネットの光ファイバーの導入」や「宅配ボックスの設置」といった快適性、資産価値の向上を目的とした設備の追加も大規模修繕工事に合わせて工事を実施することで、住人の負担を最小に抑えて導入をおこなうことができます。
大規模修繕工事には資産価値を守る役割がある
マンションの中古物件を購入予定の方にとっては、購入予定のマンションの大規模修繕工事の予定や工事履歴を確認することが常識になっています。なぜなら、中古でマンションを購入する場合には、購入予定の物件が大規模修繕工事による定期的なメンテナンスがおこなわれていることが重要な要素だからです。
計画的に大規模修繕がおこなわれてこなかったマンションの場合には、ルーズな管理組合運営がおこなわれていると認知され、購入予定者に嫌われてしまいます。なぜなら、こうした無計画な管理組合運営がおこなわれているマンションの場合には、将来的に「一時負担金の徴収」や「修繕積立金の増額」がおこなわれる恐れがあるからです。
したがって、大規模修繕工事を適切におこなうことでお部屋の売却価格を上げることができる訳です。
「日常修繕」と「大規模修繕工事」の違いは?
マンションの維持・保全の方法には、日常点検や法定点検で指摘された不具合部分を、その都度補修していく「日常修繕」と、建物や設備の部位毎の耐用年数に応じて計画的に修繕を実施していく「計画修繕」があります。 「大規模修繕工事」の言葉の定義は特に定められていませんが、一般的には「計画修繕」の内、10~15年周期で、建物の周囲に足場を設置して「屋上防水」や「壁面塗装」などの大掛かりな補修をおこなうことを大規模修繕工事と呼んでいます。