マンション住人の高齢化問題と理事のなり手不足の問題
管理組合役員の担い手が不足して管理組合の運営がままならないマンションが増えています。これから、ますますマンションの高齢化問題は深刻になっていくなか、理事のなり手の確保はマンションにとって真っ先に取り組むべき課題のひとつです。
本来は理事になるのは組合員の義務
分譲マンションは一戸建てと違い、複数の所有者が協力し合って管理をおこなう必要があります。分譲マンションに暮らす以上、マンションの理事を引き受けるのは当然の義務です。とはいっても実際にほとんどの分譲マンションでは「高齢化」や「管理に対する意識の希薄化」などを背景に理事のなり手を確保するのは困難になってきているのが実情です。
理事のなり手を増やすことは簡単ではない
分譲マンション管理組合の理事のなり手を増やすことは簡単なことではありません。役員のなり手不足の原因は高齢化といわれていますが、実際は、管理組合のために率先してボランティアで働こうという意識が低下したことが、理事のなり手がいない最大の原因だからです。分譲マンション管理組合の理事のなり手を増やすための抜本的な解決方法は残念ながらありません。
理事(役員)を引き受けない理由
国土交通省の調査では、管理組合の役員就任を引き受けない理由では「高齢のため」が36.4%と最も多く、次に「仕事等が忙しく時間的に無理だから」が22.7%となっています。
役員(理事)のなり手不足対策
対策1|役員資格の範囲を拡大
法令上は管理組合の役員の資格についての制限はないため、管理規約を改定することにより役員の資格要件を拡大することができます。多くの管理組合では役員の資格については、管理規約では「区分所有者であること」「マンションに居住していること」の2つを要件としています。理事のなり手を確保するという目的であれば、こうした要件を廃止することも有効です。しかし、区分所有者以外の賃借人等が理事になった場合には、区分所有者の利益に反する方向に進んでしまう可能性がありますので、賃借人は、理事長には就任できない制限を設けた方が良いでしょう。
対策2|役員の人数を減らす
対策3|役員に報酬を支払う
管理組合から役員に報酬を支払うことも考えられます。これまで無報酬であった管理組合で役員に報酬を支払う場合には、総会決議により規約を改正することで可能です。一方で順番でまわって理事を拒否した場合には負担金などの罰則規定を設ける方法もありますが、管理組合の狙いとは反対に「罰金を支払ったから理事をやらなくても良いだろう」ということになりかねませんので注意が必要です。
対策4|役員の賠償保険に加入
理事が理事会活動などに関して、関係者から訴えられた場合に金銭的な負担を補償する「マンション管理組合役員向けの賠償保険」を付保する方法もあります。理事が安心して理事会業務ができるようになれば理事のなり手不足解消の一助になるでしょう。この保険は管理組合が加入する共用部分の火災保険の特約です。費用は役員個人が負担するわけではなく管理組合の管理費からの支出になりますが、その負担額は年間で数万円程度ですので検討の価値はあるでしょう。
対策5|理事の外部委託(第三者管理方式)
なお、理事長を外部委託する方式は「管理者管理方式」「第三者管理方式」「理事長代行方式」とも呼ばれています。投資型・リゾート型マンションでは既に数多くの管理組合がこの方式を採用しています。
この記事のまとめ
最近、マンションの賃貸化や住人の高齢化にに伴って役員のなり手がないとか、その建物に居住している区分所有者だけに役員としての負担がかかるなど、いろいろな問題が出てきています。
そこで、このような場合にどう考えたらいいかということですが、たとえば、役員の資格を区分所有者の親族や占有者にまで広げるとか、役員に、一定の報酬を払う、あるいは、遠方の区分所有者に対しては、通信費として余分にかかる実費相当額を徴収する旨の定めを置くなどの方法で対処するほかありません。昨今では、理事長代行サービスといった区分所有者以外の専門家に理事を委託するといった方法を採用する管理組合も増えています。
補足│防火管理者の外部委託
分譲マンションにおいて理事のなり手不足と並んで問題になっているのが、防火管理者のなり手がいないことです。副理事長が防火管理者になるといったルールを設けている例がありますが「防火管理者資格」を取得するのは主に平日の2日間にわたって講習を受ける必要があることから、なり手不足が深刻になっています。そこで、防火管理者を専門家に委託するマンションが増えてきました。専門家が防火管理者に就任することで、防火管理者のなり手を確保できるだけではなく、日常の点検や消防訓練などが確実におこなわれることがメリットです。