輪番制のメリットとデメリット
理事選任の輪番制とは事前に住戸毎に順番を決めておき、順番に持ち回りで理事を決めていく方法です。一般的には1年任期で理事の全数を改選しますが、一部のマンションでは、任期を2年として任期が来たら半数ずつ交代していく半数改選の法が採用されています。
立候補してくれる組合員がいる管理組合いれば良いのですが、大多数のマンションでは、そういう積極的な方も少ないため、輪番制で平等に理事を担うという方法が多く採用されています。
メリット│輪番制での選出
- 多くの方が役員を経験できる
- 組合員にとって公平性が高い
- 事前に役員になる時期が分かる
管理組合役員の輪番制での選任のメリットは公平性という点と、全ての区分所有者が理事を経験しておくことができるということです。多くの方が理事を経験する事で管理組合の管理に対する理解が広まることになります。また、立候補制と違い輪番制では理事メンバーが常に入れ替わるので、特定のメンバーが長期にわたって理事を務めることがないため、関連業者との癒着や不透明な運営を防ぐことができます。
そのほか、輪番制では事前にいつ役員になるのか把握できるので、事前に気持ちの整理(覚悟)をしておくことができます。役員は年に一度の定期総会で選出されますが輪番制だと役員になる時期が予め分かるので計画が立てやすくなります。
デメリット│輪番制での選出
- 理事会活動が疎かになる懸念
- 順番が来ても断る方が多い
- 理事会運営の継続性に欠ける
管理組合役員の輪番制の選任のデメリットは、あまり理事会活動に積極的でない方が役員(理事)になった時に理事会の活動が停滞してしまう懸念があることです。管理に消極的なメンバーが理事会に揃った場合には、理事会が開催されない理事会に参加しないといった事態も起こり得ます。また、輪番表で自分の順番が回ってきても、理由をつけて断ることで、そもそも役員のなり手が確保できないといった問題もあります。そのほか、輪番制は任期が長くても2年程度のため理事会運営の継続性の確保は課題としてあります。
「立候補制」のメリットとデメリット
理事選任の立候補制は、自ら役員に立候補して総会の決議を経て就任する方法です。立候補制の場合には、事前にマンション内の掲示板などを利用して立候補者を募集します。実務上は、輪番制を採用している管理組合でも立候補者を排除しないことが多いようです。この場合には、立候補者を募った上で立候補者がいない場合には輪番表に従って候補者を選出します。
メリット│立候補制での選出
- 人望のある方が役員になる期待
- 管理の知識が豊富な方が役員になる期待
管理組合役員の立候補制の選任のメリットは、住人から信頼が厚い方が理事長になれば、例えば大規模改修などの重要な案件で管理組合内の合意形成が比較的容易に進むことです。また、立候補によって、管理に関する知識が豊富で、熱心な方が役員(理事)になれば管理組合の活動が活性化することが期待できます。
デメリット│立候補制での選出
- 同じ方が長期間役員を務めるリスク
- ワンマンな理事長に対する懸念
管理組合役員の立候補制での選任のデメリットは、同じ方が長期にわたって役員を務めることにより「ワンマンな理事長」といった状況になる懸念があることです。例えば、理事長と管理会社と馴れ合いになることで、癒着や着服といった不正が起こる危険性が高まります。理事会の運営は、業務の継続性が求められ反面、あまりにも役員の任期が長すぎると、理事長と管理会社との不適切な関係を疑われたり、理事会の私物化といった問題も起こります。
補足│役員の任期の設定についての注意事項
特に立候補制を採用しているマンションでは役員が固定化しやすい傾向があります。標準管理規約では「役員の再任を妨げない」としていますが、この場合には、役員が長期にわたって固定化することによる弊害もありますので、再任回数を定めておく方が良いでしょう。
特に理事長を同じ方が何期も継続すると、他の住人が無関心になったりと問題も起きやすくなりますので、理事長を1期務めたら次の期は別の方に譲るといったルールにすべきでしょう。
標準管理規約(役員の任期)
第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
第36条関係(コメント)
① 役員の任期については、組合の実情に応じて1~2年で設定することとし、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする。
② 業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする。
役員(理事)の選任方法についての調査結果
国土交通省の調査によると、役員の選任方法については、「順番」が 75.2%、「立候補」が 32.9%となっています。
この記事のまとめ
役員のメンバーが固定化するとどうしても馴れ合いや癒着といった不正行為がおこなわれるリスクが高くなります。また「万年理事長」による自己流の管理組合運営が悪影響となる場合があります。こうした事情もあって、現在では輪番制での役員選任が区分所有者の公平性の面からも推奨されています。
役員になりたくてマンションを購入したわけではなくても、いつのまにか輪番制で理事の順番がまわってきます。各々に事情があって管理組合の役員(理事)を引き受けられない事情をお持ちの方もいるでしょう。
しかし、分譲マンションは協力しあって管理をおこなうことにより成り立ち、分譲マンションに暮らす以上は、マンションの役員(理事)を引き受けるのは当然の義務となります。したがって輪番制で役員の順番が回ってきた場合には快く引き受けるようにしましょう。
なお、ここでは便宜上「立候補制」と「輪番制」を役員の選任方法と記載しましたが、これは役員の候補者の選定方法に過ぎず、実際には管理組合の役員(理事及び監事)は総会の決議を以って選任されるものです。