マンションでおこなわれる排水管清掃は法的点検ではありませんが、「排水管の詰まり」や「悪臭」などのトラブルを防止するために定期的な雑排水管の清掃をおこなう必要があります。また、排水管清掃は住戸内への立ち入りが必須となるため各居住者による協力が欠かせません。しかし実施に協力をしない居住者も多く清掃の実施率が上がらない問題も起こっています。今回は、マンションでの「排水管清掃の必要性」と「実施方法」について学んでいきます。
なお、マンションでの排水管清掃業務の事を「雑排水管清掃」と記載する場合もありますが同じものです。
排水管清掃の必要性とは
マンションで洗浄が必要となる排水管とは、台所や洗面所、風呂場・洗濯機の排水を流す管です。これらの排水管のことを雑排水管と呼んでいます。排水管には、食べ物の油脂分や毛髪などの汚れが付着して、徐々に蓄積されると、排水管内に凝固物が沈着して、排水管の詰まりや悪臭を発生させる原因となります。このような汚れを取り除き、排水管の劣化を防ぐために、定期的な清掃をする必要があります。
排水管清掃の実施方法
マンションでの雑排水管の洗浄には、高圧洗浄ポンプ設置した専門の特殊車両が使われます。高圧洗浄ポンプからつながった洗浄ホースを台所や浴室・洗濯機置場の排水口から管内に挿入して、先端のノズルから水を噴射して管内の汚れを削ぎ落としていきます。下の階から洗浄をはじめることにより、管内の清掃作業中に下部が詰まって上から汚水が溢れ出ることを防ぎます。また、排水管は、各住戸の床下の「横引き管」から「共用の竪管」につながっているため部分的に清掃をおこなっても効果が薄いため、できるだけ多くの住戸で清掃をおこなうことが大切です。
排水管清掃の実施頻度
マンションの排水管清掃は、法定点検ではないため実施頻度は管理組合の判断となります。
マンションの雑排水管に必要な清掃頻度は、排水管の素材や形状などによって異なりますが、一般的には竣工当初は2年に1回程度、10年を超えてくると毎年実施する管理組合が多いでしょう。
なお、ディスポーザーが設置されているマンションの場合には、最低でも1年に1回は排水管清掃をおこなうことが必要です。
排水管清掃実施日に不在者が多い問題への対応
排水管清掃が、マンションの他の清掃や点検等の業務と比較して困難なことは居住者の在宅が必要となることです。清掃業者が居住者が不在のまま各住戸に立入ることはできません。また管理会社も各部屋の鍵を預かることは原則としてありません。部屋内の「台所」や「浴室」の排水管の清掃作業をおこなうためには、居住者による在宅が必要になります。
排水管清掃は(拒否・辞退)可能か?
排水管清掃を受けなかったとしても罰則等はありませんが、マンションに暮らす以上こうした協力をすることは当然のことです。
掲示などを工夫して排水管清掃の実施率を高める
ファミリー向けのマンションであれば、比較的実施率を高く保つことが可能ですが「若い世帯が多く共働き夫婦の多いマンション」や「賃借人が中心のマンション」では、排水管清掃の実施率を高めることは容易ではありません。
マンションでは、排水管が一箇所でも詰まると、他の住戸の漏水の原因にもつながるので、居住者が排水管を受けることは当然の義務です。下のリンク先では、排水管清掃の実施者を増やすための掲示のサンプルをご覧いただけます。
補足│排水管清掃後のアフターサービス
雑排水管清掃業務を実施する業者によって清掃後のアフターサービスの内容には違いがありますので、理事会では管理会社などに確認をする必要があります。一般的には、排水管清掃作業完了後1年間は、詰りが発生した場合は無償で対応します。また、未実施の住戸は、後日、再作業日を別途1日設けてくれる業者もあります。特に管理組合が雑排水管清掃業者に直接発注する場合には、こうしたアフターサービスの取り決めの他、未実施の住戸の支払い条件や保証内容などを確認することが重要となります。
排水管清掃当日の各住戸の準備
最も大切なことは、あらかじめ指定された時間に在宅をしていることですので、「部屋が汚い」「恥ずかしい」といった理由で居留守を使うなどの行為はご法度です。その他、特別な準備は必要ありませんが、台所や風呂場等の各排水トラップの目皿のゴミは掃除しておく方が望ましいでしょう。また、作業時には、玄関ドアから高圧ホースが室内に入るので、玄関の靴などは片づけておきます。
順調に進めば、作業時間は10分以内で終了して、最後に業者が用意した作業完了報告書に押印、もしくはサインをして終了となります。
ドラム式洗濯機の移動の問題
最近の洗濯機はドラム式が主流で、本体サイズが大きいため、設置スペースの問題で洗濯機の下に排水口が隠れてしまい、洗濯機下の排水口からの清掃ができないケースが増加しています。ドラム式洗濯機は重量があるため自力で移動させることは困難です。
清掃業者によっては一時的に洗濯機を持ち上げるなどの対処をする場合もありますが、洗濯機の故障や壁面の破損の原因になるため、あまり一般的ではありません。こういった場合には、 洗濯機の下部にスペースを空けるための嵩上げ台なども市販されているため管理会社の担当者等に相談の上、対応を検討しましょう。
この記事のまとめ
そのため、居住者の都合で毎回、同じ部屋で排水管清掃を実施できない事例も多いのが実態です。しかし長期間清掃を実施しないと、排水不良が生じて場合によっては排水が漏れて下階への漏水事故につながる恐れもあるため、できるだけ実施率を高めるための対策が必要となります。