大規模修繕工事の期間は特に理事の負担が大きい
大規模修繕工事の検討段階では役員に負担がかかるので、普段にも増して理事のなり手を確保するのに苦労が伴います。大規模修繕工事の時期には「業者の選定」や「工法の検討」そして、合意形成など理事会に大きな負担が掛かります。
もちろん定期的な理事会開催にかかわる時間増もそうですが、それ以上に「どうしてその業者を選んだ?」といった他の居住者からのクレームや圧力による精神的な苦労が多いでしょう。
したがって大規模修繕工事のコンサルタントを導入することで、技術的なサポートは無論ですが、理事会が他の区分所有者から受ける精神的な苦労を緩和できることが大きなメリットにつながります。
大規模修繕工事のコンサルタントの役割
分譲マンションの大規模修繕工事では、その検討過程の「透明性・公平性」が最も重要になります。しかし区分所有者による理事会では、経験や専門知識を持たないため公平性を担保することは非常に困難です。
第三者の立場であるコンサルタントは、適時アドバイスをおこなって、管理組合の利益保護に努めると共に、大規模修繕工事を成功に導くサポートをおこないます。
コンサルタントの主な業務内容
調査診断業務
マンションの劣化状況を把握するために建物診断を実施します。
改修設計業務
診断結果をもとに、改修設計書の作成をおこない工事予算を算出します。
工事会社選定業務
入札等の方法で公正な施工業者選定のサポートをおこないます。
工事監理業務
工事の品質・工程、安全対策など施工業者の業務を監理、指導します。
アフター点検業務
大規模修工事終了後は、アフター点検やサポート業務を実施します。
コンサルティングを請け負う会社の種類
分譲マンションの大規模修繕工事のコンサルティングを請け負う会社は以下のように分類されます。
大規模修繕工事コンサルタント4つの業態
- マンション管理会社
- 日常業務を委託している管理会社が、大規模修繕工事のコンサルティング業務をおこないます。マンションのことを良く知っている反面、施工を管理会社の工事部門や関連会社がおこなう場合にはその中立性に疑問が残る場合もあります。
- コンサルティング専門会社
- マンションの大規模修繕工事のコンサルティングを専門におこなう会社です。分譲マンションの管理組合特有の事情や合意形成の方法などに精通していることがメリットです。
- 一級建築士事務所
- 一級建築士事務所は主に新築の建物の設計をおこないますが、大規模修繕工事のコンサルティングをおこなう事務所もあります。ただし、新築の設計とマンションの大規模修繕工事は別物ですので、大規模修繕工事の知識や経験、管理組合の合意形成の方法などに精通しているか確認する必要があります。
- マンション管理士事務所
- マンション管理士は、マンション管理組合の運営についての知識が豊富な場合が多いため、合意形成に至る過程については適切なサポートが期待できるでしょう。一方で、ハード面での技術的な知識が不足しているケースや、1,2名といった比較的小規模な事務所が多く組織的なサポートを受けることは困難でしょう。
コンサルタント選び
マンション毎に規模や条件が異なるので、一概にどの業者が良いといったアドバイスは困難ですが、まず、重要視すべき共通事項は分譲マンションにおける大規模修繕のコンサルティング実績です。分譲マンションの大規模修繕工事においては、建築の知識が持っているだけでは不十分で、管理組合の運営についての知識や経験があることが必要不可欠です。
この記事のまとめ
各住人の協力を得るためには、検討の早い段階から、必要な情報は公開して修繕工事の必要性に対し理解を深めていただくことが重要です。こうした過程が、最終的な総会における合意形成につながります。しかしながら、専門知識を持たない区分所有者による理事会を中心とした活動には限界があります。マンションの大規模修繕工事には、区分所有者から徴収した修繕積立金を使って行われます。自分たちのお金が使われるわけですから「理事会」や「修繕委員会」に対する視線も厳しくなりがちです。そこで、専門知識をもった中立なコンサルタントを採用してワンクッション置くことで理事会の負担は大幅に削減できるでしょう。コンサルタントを採用することにより追加の費用が掛かりますが「無駄な工事を省く」「適切な施工業者を選択」するいった削減効果も期待できるので、マンションにとっての一大プロジェクトである大規模修繕工事を成功に導くためにもコンサルタントの採用をおすすめします。
しかし、残念ながら大規模修繕工事における不適切コンサルタントの存在が社会問題になっています。設計コンサルタントを採用しない責任施工方式での大規模修繕工事の方法も検討の余地があるでしょう。