辞退したからといって法令で罰則があるわけではない
役員の選任方法は、一般的には「立候補」もしくは「輪番」制です。輪番制の場合には、マンションの戸数や役員の人数にもよりますが、小規模のマンションだと2年に1度といったペースで順番がまわってくるケースもあります。
役員への就任を断ったからといって、法令で罰則があるわけではないのですが、一般論としては他の方も順番だから渋々役員を引き受けている中で、自分だけが役員になることを辞退するのは道義的な問題が発生します。
当然ですが、役員を引き受けた方から不公平だという不平不満が出てくるでしょう。分譲マンションの場合には、今後もマンション内外で、役員の方と顔を合わせる機会も多いわけですからこうした事態は避けるのが懸命です。
補足│管理組合の役員就任への対応
国土交通省の調査でも、役員を引き受けた方も決して快く引き受けたわけではなく「仕方なく順番だから」という理由で引き受ける場合が多いようです。したがって、自分だけが嫌だから引き受けないというのは身勝手な方だと思われても仕方がありません。
補足│管理組合の役員の経験
国土交通省の調査でも、分譲マンションに暮らす多くの方が役員に就任した経験をもっています。マンションは共同生活ですので公平に役員を引き受けるのが自然ですし、お互いに気持ちよく生活するためにも、できれば理事も自らすすんで引き受けるべきものです。
実際に理事の負担はどの程度なのか
理事会は、通常、1~2ヶ月に1回程度おこなわれます。特に問題や課題がなければ、すんなりと短時間で終わる理事会もある一方で、管理費の値上げや、居住者からのクレーム等があった場合には、会議が紛糾して長時間に及ぶこともあります。
理事会の進行については基本的には、管理会社の担当者(フロントマン)が同席しますので、管理についての専門的な知識を求められるというよりは、管理会社からの提案や報告に対して意見を述べるといった内容です。
理事長の負担は少し重い
理事長は、年に一回実施される定期総会で議長として他の組合員大勢の前で進行をおこなう必要があるほか、日常的には管理会社との担当者とのやりとりや、管理組合からの支出に対して印鑑を押すといった手間や責任があるため、他の理事に比較すれば時間・心理的な負担は重くなります。
理事の辞退者は、負担金を支払うルール
役員の辞退者に対して、一定の負担金を課して不公平感を和らげようというルールを規約や細則に設定するマンションが増えています。こうしたルールが、きちんと管理規約や細則に定められているのであれば、理事を辞退する際には、こうした負担金を支払う必要があります。
見方をかえれば、支払いさえすれば金銭的な負担をしたことにより最低限の義務を果たしたことにはなりますので、こうした負担金が設けられていた方がむしろ断りやすいといった側面はあるかもしれません。しかし忘れてはいけないのは、役員を務めるという責務は金銭には換算できないので、仮に負担金を支払ったからといって、理事を引き受けた方が辞退者に対して快く思っていないという認識を持つことです。
この記事のまとめ
しかし「人付き合いが苦手」だから「面倒だから」といった理由で、役員は断ることはやめるべきです。病気であったりと、他の人も納得できる理由があればよいのですが、ただ「高齢である」「忙しい」といったことで役員の就任を断っていたのでは理事会は成り立ちません。
一方で、輪番で回ってきたから、仕方なく理事になって理事会で一切意見をしないと開き直ったら自分にとってもマンションにとっても良い結果にはなりません。
同じ断るにしても、総会や理事に対して、「理事を外部委託する第三者管理方式」を提案するとか負担金のないマンションでは「自ら負担金の徴収を提案したり」といった、前向きな行動が分譲マンションに暮らす方の責務ではないでしょうか。
誰もが納得できる断る事情がある場合には、自ら現理事会に出向いて役員を受けられない理由について説明をおこなうことが重要です。
また、前出のとおり、管理組合の理事のなり手不足対策としては、理事を拒否する方に対して負担金を請求する方法は、むしろ心理的に理事を断りやすくする側面をもっていますので、理事の人数を確保するという目的に対しては必ずしも良い結果を生むとは限りません。