マンション総合調査の活用
「マンション総合調査」は、5年に一度、国土交通省が行う総合的な調査資料です。「管理組合」と「分譲マンション所有者(区分所有者)」の2つを対象とした全国規模のマンション管理に関する調査結果であり、他のマンションの状況を知ることのできるマンション管理に関する貴重な資料です。マンションにはそれぞれ規模や築年数などの違いがありますので、他のマンションに合わせれば良いということではありませんが、これから起こりえるマンション管理の課題などを知る上での参考になるでしょう。
【関係資料】
- 平成30年度マンション総合調査結果
- 平成25年度マンション総合調査結果
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マンション総合調査の概要
この調査はマンション管理組合向けと、分譲マンション所有者(区分所有者)向けのアンケートによる方法でおこなわれます。平成30年度の調査では、1,688の管理組合、3,211人の区分所有者から回答(有効回収数)を得ています。(平成25年度の調査では、2,324の管理組合、4,896人の区分所有者から回答(有効回収数))マンション管理組合やマンション管理のコンサルタントにとって他のマンションの管理の状況を知ることのできる貴重なデーターです。調査項目は多岐にわたりすべてを見ていくのは困難であることから、今回はそのデーターの一部を抜粋してみていきます。
<平成30年度マンション総合調査結果報告書>
管理組合向け調査 | 区分所有者向け調査 | |
配 布 数 | 4,200(管理組合) | 8,400 (人) |
有効回収数 | 1,688 | 3,211 |
回 収 率 | 40.2% | 38.2% |
<平成25年度マンション総合調査結果報告書(前回調査)>
管理組合向け調査 | 区分所有者向け調査 | |
配 布 数 | 3,643 (管理組合) | 7,484 (人) |
有効回収数 | 2,324 | 4,896 |
回 収 率 | 63.8% | 65.4% |
平成30年度の調査結果の特記事項
(1)マンション居住の状況
1-1.永住意識
マンション居住者の永住意識は高まっており、平成30年度調査において「永住するつもり」が過去最高の62.8%(前回調査より+10.4%)となった。
1-2.世帯主の年齢
居住者の高齢化が進展し、70歳代以上の割合は22.2%(前回調査より+3.3%)となった。なお、完成年次が古いマンションほど70歳代以上の割合は高くなっており、昭和54年以前のマンションにおける70歳代以上の割合は47.2%であった。
1-3.賃貸戸数割合
賃貸住戸のあるマンションの割合は74.7%(前回調査より-3.1%)となった。なお、完成年次が古いマンションほど賃貸住戸のあるマンションの割合が高くなる傾向が見られた。
1-4.空室戸数割合
空室があるマンションの割合は37.3%(前回調査より-3.6%)となった。なお、完成年次が古いマンションほど空室がある割合が高くなる傾向が見られた。
(2)マンション管理の状況
2-1.計画期間25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金の設定
計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているマンションの割合は53.6%(前回調査より+7.6%)となった。
2-2.修繕積立金の積立状況(新規調査項目)
計画上の修繕積立金の積立額に対して現在の修繕積立金の積立額が不足しているマンションの割合は34.8%であり、計画に対して20%超の不足となっているマンションの割合は15.5%であった。
(3)管理組合運営の状況
3-1.外部役員の選任意向(新規調査項目)
外部専門家の理事会役員への選任について、「検討している」又は「必要となれば検討したい」としたマンションの割合は28.3%であり、その理由として「区分所有者の高齢化」や「役員のなり手不足」が多く挙げられた。
平成30年度マンション総合調査結果報告書(一部抜粋)
1.マンション居住の状況
(1)世帯主の年齢〔区1〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、70歳代以上の割合が増加する一方、30歳代以下の割合が減少している。平成11年度から平成30年度の変化をみると、60歳代、70歳代以上の割合が増加、50歳代以下の割合が減少しており、居住者の高齢化の進展がうかがわれる。
平成30年度における完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど70歳代以上の割合が高くなっており、昭和54年以前のマンションにおける70歳代以上の割合は47.2%となっている。
2)賃貸戸数割合〔管2①〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、賃貸住戸のあるマンションの割合は減少しており、74.7%となっている。そのうち、戸数割合が0%超~20%のマンションの割合は57.6%、20%超のマンションの割合は17.1%となっており、いずれも減少している。
平成30年度における完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど賃貸戸数割合が20%超のマンションの割合が高くなる傾向がある。
(3)空室戸数割合〔管2②〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、空室があるマンションの割合は減少しており、37.3%となっている。そのうち、空室戸数割合0%超~20%のマンションの割合は36.1%に減少した一方、空室戸数割合が20%超のマンションは1.2%へ増加している。
平成30年度における完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど空室があるマンションの割合が高くなる傾向がある。
(4)所在不明・連絡先不通の戸数割合〔管2②、管2③〕(新規調査項目)
※所在不明・連絡先不通とは、組合員(区分所有者)名簿により所有者が直ちに判明しておらず、又は判明していても所有者に連絡がつかないもの所在不明・連絡先不通の空室があるマンションの割合は3.9%となっており、そのうち当該マンションの総戸数に対する所在不明・連絡先不通の住戸の割合が20%超のマンションは2.2%、0%超~20%のマンションは1.7%となっている。
平成30年度における完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど所在不明・連絡先不通の住戸があるマンションの割合が高くなる傾向がある。
(5)永住意識〔区4③〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、マンション居住者の永住意識は高まっており、平成30年度は62.8%の区分所有者が「永住するつもりである」としている。
(6)マンション購入の際に考慮した項目〔区4⑥〕(新規調査項目)
マンション購入の際に考慮した項目は、駅からの距離など交通利便性が72.6%と最も多く、次いで、間取りが63.7%、日常の買い物環境が52.8%など、生活環境に関する項目で半数を超えていた。一方、管理運営に関する、共用部分の維持管理状況は11.5%だった。
2.マンション管理の状況
(1)長期修繕計画の作成〔管32①〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、長期修繕計画を作成している管理組合の割合は増加し、平成30年度は90.9%となっている。
(2)計画期間25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定している割合〔管32②(1)〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているマンションの割合は増加し、平成30年度は53.6%となっている。
(3)月/戸当たり修繕積立金の額〔管29④(4)、管29④(7)〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、月/戸当たりの修繕積立金の額、駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額ともに増加しており、平成30年度の月/戸当たりの修繕積立金の額の平均は11,243円、駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額の平均は12,268円となっている。
平成30年度における完成年次別内訳をみると、平成22年以降のマンションの月/戸当たり修繕積立金の額の平均は全体の平均を大きく下回っている。
(4)現在の修繕積立金の積立方式〔管29⑥〕(新規調査項目)
現在の修繕積立金の積立方式は、均等積立方式が41.4%、段階増額積立方式が43.4%となっている。完成年次別内訳をみると、完成年次の新しいマンションほど段階増額積立方式となっている割合が多い。
(5)修繕積立金の積立状況〔管32③(4)〕(新規調査項目)
計画上の修繕積立金の積立額と現在の修繕積立金の積立額の差は、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが34.8%となっている。そのうち、不足の割合が20%超のマンションが15.5%になっている。
(6)長期修繕計画の見直し時期〔管32⑥〕(新規調査項目)
長期修繕計画の見直し時期は、「5年ごとを目安に定期的に見直している」が56.3%、「修繕工事実施直前に見直しを行っている」が12.5%、「修繕工事実施直後に見直しを行っている」が10.1%となっている。一方、見直しを行っていないマンションの割合は5.7%となっている。
(7)耐震診断・耐震改修の実施状況〔管35①、管35②、管35③〕
旧耐震基準に基づき建設されたマンションのうち耐震診断を行ったマンションは34.0%となっており、そのうち「耐震性があると判断された」割合は40.8%であった。また、「耐震性がないと判断された」マンションのうち、「耐震改修を実施する予定はない」割合は38.1%であった。
(8)マンションの老朽化問題についての対策〔管36①、管36③〕
マンションの老朽化問題についての対策の議論を行い、建替え等又は修繕・改修の方向性が出た管理組合は21.9%となっている。一方、議論は行ったが方向性が出ていない管理組合は16.6%、議論を行っていない管理組合の割合は56.3%であった。
3.管理組合の運営等
(1)管理者の選任〔管9〕
管理者の選任状況をみると、87.6%が区分所有者の管理組合の代表者(理事長)であり、区分所有者以外の第三者が管理者となっているマンションは6.4%となっている。
(2)専門家の活用状況〔管19①〕
専門家を活用しているマンションは41.8%であり、活用した専門家は、建築士が15.6%と最も多く、次いで弁護士が15.2%、マンション管理士が13.0%となっている。
(3)専門家の選任理由・選任形式〔管19②、管19③〕(新規調査項目)
専門家を選任している理由としては、大規模修繕等の実施が43.3%と最も多く、次いで知識・ノウハウの不足が33.9%、管理費の滞納等への法的措置が32.0%となっている。また、選任形式は単発のコンサルティング業務が61.2%と最も多く、外部役員の就任(理事長等への就任)は4.1%であった。
(4)外部役員を選任する意向・理由〔管20①、管20②〕(新規調査項目)
外部役員の選任意向は、検討している又は将来必要となれば検討したい意向をもつマンションが28.3%となった。検討理由は、区分所有者の高齢化が37.6%と最も多く、次いで役員のなり手不足が36.5%となった。
(5)大規模災害への対応状況〔管17〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、平成30年度で「定期的に防災訓練を実施している」、および「災害時の避難場所を周知している」と回答した管理組合は、平成25年度よりも5%以上増加している。また、平成30年度で「特に何もしていない」と回答した管理組合は23.4%であり、平成25年度よりも6%近く減少している。
(6)トラブルの発生状況〔管41①(1)〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、特にトラブルがないマンションは23.2%に減少しており何らかのトラブルを抱えているマンションが増えている。発生したトラブルについては、居住者間のマナーをめぐるトラブルが55.9%と最も多く、次いで建物の不具合に係るトラブルが31.1%、費用負担に係るトラブルが25.5%となっている。
(7)居住者間のマナーをめぐるトラブルの具体的内容〔管41①(2)〕
平成30年度は、生活音が38.0%と最も多く、次いで違法駐車・違法駐輪が28.1%、ペット飼育が18.1%となっている。
(8)管理費等の滞納戸数割合〔管31①、管31②、管31③〕
平成25年度と平成30年度を比較すると、管理費等の滞納が発生しているマンションの割合は減少しており、滞納が発生していないマンションは62.7%となっている。
平成30年度における完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど管理費等の滞納があるマンションの割合が高くなる傾向がある。
(9)トラブルの処理方法〔管41②〕
平成30年度は、管理組合内で話し合ったが58.9%と最も多く、次いでマンション管理業者に相談したが46.5%、当時者間で話し合ったが19.4%となっている。
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