専用使用権のついた共用部分とは
マンションの「バルコニー」や「専用庭」は専有部分ではなく共用部分ですが、ただの共用部分ではなく「専用使用権のついた共用部分」とされています。
専用使用権のついた共用部分は「共用廊下」や「階段」などの共用部分とは違い、その場所に接している専有部分の居住者しか原則としてそこの場所を使うことができません。このように、共用部分でありながら、排他的にその場所を利用することのできる特別な共用部分を専用使用権のついた共用部分と定めています。
具体的には、専用使用権のついた共用部分として「バルコニー」や「専用庭」のほか「玄関ドア」「窓ガラス」「窓枠」などがこれに該当します。
なお「専用使用部分」とは、専用使用権の対象となっている敷地及び共用部分等の部分のことです。
専用使用権のついた共用部分の管理責任は誰が負う?
マンションの「専有部分」については、その部屋の区分所有者が、共用部分については管理組合が管理責任を負うのが原則です。それではこの専用使用権のついた共用部分の場合、誰が管理責任を負うことになるのでしょうか?
この場合には、通常の用法の場合「専用使用権のついた共用部分を利用する者」が管理責任者となります。通常の用法とは、例えばバルコニーの場合には掃除を始めとした日常のお手入れなどのことを指し、その管理責任は、バルコニーの専用使用権者(区分所有者)が負うことになります。
費用負担の例1│バルコニーの経年劣化
バルコニーの防水や経年劣化の摩耗については、計画修繕工事によってこれの抜本的な修繕工事を行います。この場合は管理組合の責任で持って、これを管理していくという扱いになります。
費用負担の例2│窓ガラスや網戸の破損
日常的に使っていて「窓ガラスが割れてしまった場合」や「網戸が破れてしまった場合」には、各区分所有者の費用負担によりこれを修繕することになります。共用部分だからといって全てを管理組合が管理責任を負うわけではありません。
費用負担の例3│突発的な事故などの場合
窓ガラスが割れた原因が、野球ボールなど外からの飛来物あった場合はどうなるのでしょうか。この場合は、区分所有者の方に何ら過失もなく、「通常の用法」内の事故とはいえません。こうしたケースでは共用部分の破損事故ということで、管理組合の責任においてマンション管理組合で加入している保険を適用して修繕を行うことが妥当でしょう。
補足│専用使用権のついての管理規約での記載
専用使用権の範囲や取扱いについては、マンションの管理規約に規定されています。範囲を管理規約で明確にすることで、責任の区分をめぐったトラブルを防ぎます。こうした範囲が「管理規約」や「細則」で明確になっていない場合にはトラブルの原因となるため理事会で管理規約等への追記を検討します。
標準管理規約(バルコニー等の専用使用権)
第14条 区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。
2 一階に面する庭について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。
3 区分所有者から専有部分の貸与を受けた者は、その区分所有者が専用使用権を有しているバルコニー等を使用することができる。
標準管理規約第14条関係コメント
① バルコニー等については、専有部分と一体として取り扱うのが妥当であるため、専用使用権について定めたものである。
② 専用使用権は、その対象が敷地又は共用部分等の一部であることから、それぞれの通常の用法に従って使用すべきこと、管理のために必要がある範囲内において、他の者の立入りを受けることがある等の制限を伴うものである。また、工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は使用細則で物件ごとに言及するものとする。
③ バルコニー及び屋上テラスが全ての住戸に附属しているのではない場合には、別途専用使用料の徴収について規定することもできる。
標準管理規約・別表第4 バルコニー等の専用使用権
区分 バルコニー 玄関扉
窓枠
窓ガラス1階に面する庭 屋上テラス 位置 各住戸に接する
バルコニー各住戸に
附属する玄関扉
窓枠
窓ガラス別添図の
とおり別添図の
とおり専用使用権者 当該専有部分の
区分所有者同 左 ○○号室住戸の
区分所有者○○号室住戸の
区分所有者
補足│専用使用権の費用負担がトラブルにならないように管理規約に記載
バルコニー等の専用使用権を有する区分所有者のみが使用する部分の日常的な管理については、その費用負担をめぐって、しばしばトラブルに発展するケースがあります。
そこで「専用使用権を有する者」が「自己の責任と費用負担において日常的な管理をおこなうこと」を明確にするために、費用負担について管理規約に記載しておくことが、未然にトラブルを回避するためには重要です。
標準管理規約(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
マンション管理標準指針・敷地及び共用部分の範囲
バルコニー等が共用部分等の一部である場合、日常的には当該専用使用権を有する区分所有者のみが使用する部分であるため、通常の使用に伴う管理については、専用使用権を有する者が自己の責任と費用負担において行う等管理規約に規定する必要があります。
この記事のまとめ
そこで、管理規約に「専用使用権のついた共用部分」の箇所と「費用負担の区分」を明確に記載してしておくことでトラブルを未然に回避します。こうした記載がない場合には、理事会で管理会社の担当者(フロントマン)やマンション管理士の支援を受けて、管理規約の見直しを検討しましょう。