緊急時に必要な居住者名簿
マンションの災害対策を考えるうえで、忘れてはならないことは避難所が足りないために「在宅避難」を求められる他、管理会社はもちろん、おそらく消防や救急などの公的な支援や救助も、なかなかマンションにまで手が回らない可能性があることです。
災害発生後は、管理組合がマンションの住民の安否を確認することからはじめます。こうした事態に備えて、居住者の連絡先などの情報を集めておく必要があります。
一般的に管理会社に提出している名簿では、マンションの居住者全員の情報を管理していないことから、こうした名簿とは別に管理組合が保管する居住者名簿を整備しておくことが大切です。
ただし、こうした個人情報はプライバシーを侵害する恐れがありますので、整備にあたってはその取扱いのルールを細則等にまとめておく必要があります。また、マンションの住人は日々入れ替わりがあるので情報の更新を怠らないようにします。
地震に対する備え
前提として、建物が地震に負けない構造であることが重要です。地震に強い鉄筋コンクリート造のマンションであっても1981年以前の耐震基準で設計されたマンションでは、大地震により建物が破損する可能性があります。自治体の助成などを上手に活用して耐震診断・耐震改修をおこないます。
また、地震の揺れによってバルコニーから鉢などが落ちないように普段から掲示などをおこなって注意喚起をおこないます。いざというときには、バルコニーからの避難経路の確保も重要になります。物置などの私物で通路を塞がないように周知徹底をします。
火災に対する備え
マンションでは消防訓練を年に1回以上実施することが必要です。最寄りの消防署に協力を依頼して、消防車や起震車の出動、避難器具を使った訓練などをおこないます。
消防訓練は、出席者を増やすためにも総会などに日程に合わせておこなうようにします。その他、日頃からマンション内を巡回して、防火扉や防火壁の周辺などに物が置かれていないか、火災の延焼や放火につながる恐れのある「チラシ」「ダンボール」が放置されていないか確認をおこないます。
こうした業務は、防火管理者の主導でおこなうことになりますので、事前にマンションの住人から防火管理者を選任しておくことは基本事項です。
水害に対する備え
マンションは水害とは無縁だと思われていますが、近年多発している大型台風やゲリラ豪雨により、都市部においても、道路の排水能力を超えてマンションの敷地内に水が溢れ、機械式駐車場などでは車両が水没してしまう被害も発生しています。こうした事態に備えて、地下ピットなどの排水ポンプ設備などの定期的な点検が必要です。
また、台風や大雨の予報があったら掲示等で居住者に注意をよびかけ、敷地内を点検して、必要があれば「土嚢の積み上げ」「強風で飛びそうな物の片づけ」「排水口の清掃」などをおこないます。
機械式駐車場がある場合には、車両の移動なども検討します。こうした対応は、管理会社や管理員が不在の時間に対応する必要もでてくるので、日常から周知を図りマンションの住人による訓練をしておく必要があります。
■「台風、集中豪雨による被害対策」についての文例は以下のリンクからダウンロードできます
この記事のまとめ
いざ災害となったときには、事態が落ち着くまでは、交通や情報通信の不通などで外部からの支援は期待できません。
管理会社にまかせているのだから、管理会社がなんとかするはずだと考える人もいるかもしれませんが、管理会社のフロントマン(担当者)や管理員も、マンションの住人と同様に被災者となります。
また、管理組合と管理会社が結んでいる管理委託契約書にも、防災関係の業務は含まれていません。
こうしたことから、マンションの防災対策の基本事項として、災害発生時に「管理会社からの支援は当面の間はない」ことを前提とします。災害発生時に自立対応できるマンションを目指して、万が一、想定していない災害が起こった時でも、マンションの住人自らが判断して命を守り生活を維持するための備えをしっかりとおこなっていくことが重要です。
昨今では、コロナ感染症拡大への懸念から例年通りの防災訓練等が実施できず、防災についての住人への周知や備蓄品のチェックなども十分に出来ないままになっているマンションも多いようですので、マンションの防災について再確認されてはいかがでしょうか。