マンション管理組合で管理規約を改正する場合には、規約の記載内容の変更や追記が「一部の組合員等の権利に特別の影響を及ぼすことになる」場合には、事前にその「影響を及ぼす組合員」の承諾を得ておくことが必要です。しかし管理規約の改正によって生じる「特別の影響を及ぼす範囲」ついて明確な基準はありません。今回は、判断の難しい「特別の影響」の範囲について考えていきます。
管理規約改正時の「特別の影響」とは
管理規約規約の「設定」「変更」「廃止」は特別決議が必要となり、区分所有者の「4分の3以上の出席」、議決権の「4分の3以上の賛成」で承認されます。
この場合においては「一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」とされています。
この「特別の影響」の範囲については判断が難しく、一般的には「その決議によって区分所有者が受忍すべき限度を超える程度の不利益を受けると認められる場合」とされています。
標準管理規約(総会の会議及び議事)
第47条
3(一部抜粋)
次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
7 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
「特別の影響」にあたる可能性のある事例
この承諾を必要とするのは、多数決の濫用により一部の区分所有者の権利が不当に害されてはならないとの趣旨によるものです。したがって、「特別の影響」とは、合理的な理由もないのに特定の区分所有者に対して受忍の限度を超えて課せられる不利益をいいます。
- これまで専有部分で店舗営業をおこなってきたが、管理規約の変更により専有部分の用途を住居専用とする場合
- 特定の区分所有者に対して与えられていた駐車場の無償使用の権利を規約変更で消滅させる場合
- 区分所有者の使用頻度によって管理費の負担割合を変更するが、その額に公平性を欠くほど差をつけた管理規約に変更する場合
この記事のまとめ
マンションの管理規約の改正時(「設定」「変更」「廃止」)に事前に承認が必要となる「特別の影響」の範囲についての明確な基準はありませんが、裁判の判例等では管理規約の改正内容が管理組合にとって必要性が高いと認められるケースでは、承諾無くおこなわれた管理規約改正も有効とされることが多いようです。
事前に承諾が必要であるか理事会等で判断が難しい場合には、管理会社の担当者(フロントマン)や外部の専門家であるマンション管理士や弁護士などの意見を参考にすることが大切です。
いずれにしても、管理規約の改正が、特定の方に少なからず影響を与えると考えられる場合には、総会での決議の前に、当事者と十分に話し合いをおこなうことがトラブルを未然に防ぐためには、とても重要なこととなります。