「理事会」と「管理会社」のやりとりのIT化の現状
マンション管理会社の担当(フロント)と理事とのやり取りは電話やメール、もしくは郵便ではないでしょうか。理事会のスケジュール調整を回覧や郵送などでおこなう方法はいかにも非効率です。
実は管理会社の担当者も困っている
管理会社の担当(フロント)も、新しい理事長が高齢者でメールなどを使えないとわかると、言葉は悪いのですが、がっかりするのが正直なところです。日中、電話で連絡を取れる方であればまだ良いのですが、それも難しいとなると郵送や訪問をするしかありません。これでは速やかな理事会運営は不可能です。
理事長はスマートフォンやパソコンの使える方が望ましい
これがグループウェアでのやり取りであれば、例えば、議事録の素案の確認もスピーディーになるし、記録が残るので後々のトラブルを減らす効果もあります。こうしたことを考慮すれば、少なくとも管理会社の担当者と頻繁にやりとりを行う必要のある理事長はスマートフォンやパソコンを使える方が望ましいでしょう。
マンション管理組合内の情報共有
理事会のメンバー同士の連絡先の交換については意見の分かれるところです。同じ建物内に住んでいるとはいえ、年代や価値観の異なる方とメールアドレスの交換をすることに抵抗があるからです。
管理組合や理事会毎に考え方は異なりますが、理事同士を連絡先を交換しないで管理会社をとおしての交流に留めるケースもあります。ただし、速やかで熱心な理事会運営には、理事同士の協力関係がかかせないので、できればメールアドレスの交換だけでもおこなった方が望ましいでしょう。
マンションで課題を抱えていたりと頻繁に理事同士での打ち合わせが必要な場合には、サイボウズ等のグループウェアの活用も有効です。
汎用のグループウェアの活用
無料で使い勝手の良いグループウェアがなかなか見つからないのが残念ですが、有料プランであっても極少数で使う場合には月数百円程度から利用ができるので理事会メンバーだけ利用するといった方法が現実的でしょう。
マンション管理組合専用の情報共有ツール
マンション管理組合専用の情報共有ツールもあります。情報共有するだけではなく管理組合向けの様々な機能があります。
ただし、管理組合全員でWeb掲示板等を使用する場合には、誹謗中傷などで荒れる可能性があるので、運営には注意が必要です。
SNSの活用
FacebookやLINEなども理事のやりとりには利用できます。しかしこうしたSNSはプライベートのつながりを基本としているため、理事同士のやり取りに利用するのには、あまり向いているとはいえません。マンション全体でのSNSでの交流は、こうした情報交換に積極的な住民とそうでない住民の対立が深まる恐れがありますので注意が必要です。
オンラインを使った「総会・理事会」サービス
コロナ禍の中で、オンライン理事会を実施する管理組合が増加しており、中には住人説明会をオンラインと会場の同時進行するマンションも出てきています。今後はオンライン理事会が常態化するマンションも出てくるかもしれません。
一歩進んでオンライン総会を開催するために必要となるのが、管理規約を改定して、オンライン上での「出席」や「議決権の行使」を認めるようにすることです。
理事会を集まらないで行なうWebサービス
マンション標準管理規約改定
2021年6月22日に「マンション標準管理規約」の改正が国土交通省から発表されました。改定内容のひとつに「ITを活用した総会・理事会」の実施が可能なことを明確化し、これに合わせて留意事項等を記載しました。
これまでは、「IT総会・理事会」の実施が可能なのかどうか、有効な総会・理事会として認められるのかどうか、そもそもはっきりしていませんでした。そこへ今回の新型コロナ禍の対応策の一つとして今回、マンション標準管理規約上も「IT総会・理事会」が可能であることが示されて、大きく前進することとなりました。
マンション管理会社の大和ライフネクストが、Web上での理事会開催・質疑応答・決議を可能としたシステム「Web理事会サービス」を運用しています。従来のメンバー全員が対面でおこなう理事会方式にかわり、今回のコロナ禍の影響もあって現在では当たり前の仕組みになっています。
Web会議システムをつかった理事会運営
Web会議とは、主に企業の対面式の会議を、パソコンやスマートフォンを使用して音声・映像でやり取りするためのツールです。コロナ禍の状況の中でこうしたシステムを利用して総会や理事会を開催する管理組合も増えています。
総会の投票をオンラインでおこなう仕組み
総会で票を集計するのは意外と手間が掛かります。そこで、これらの作業を電子投票でできるシステムが出始めてきました。パソコンやスマートフォンで投票することが可能なので、タワーマンションなどの大型マンションや、投資型やリゾートマンションなどには、有益なシステムです。
ただし、まだまだパソコンやスマートフォンなどを取り扱えない高齢者などもいますので、電子投票システムを導入する場合でも、これまでのどおりの紙の使用も選択肢として残す必要があります。
マンションの総会で電子投票を利用する場合には、管理規約の改正が必要になる場合が多いでしょう。
重要書類のデジタル化
現在の管理組合で多く使われているデジタル技術は、設計図面や構造計算書などの重要書類のデジタル化です。多くの管理会社でこうしたシステムが使われているので分譲時から書面のデジタル化が行なわれています。一方で築年数の経ったマンションや管理会社によっては、こうした重要書類が管理員室の棚に収納されていることもあります。
こうした場合には、紙の劣化や紛失等の恐れもあり、いざ大規模修繕工事や排水管等の改修などとなった場合に見つからないケースも少なくありません。
重要書類を電子化する
電子化をされていないマンションでは特に竣工図書などは大判の図面が多く、個人でのスキャンは難しいので業者に依頼しましょう。
公益財団法人マンション管理センターが提供する「マンションみらいネット」には、管理組合の有する管理規約などの書類を電子化して保管し、インターネットで閲覧できるようにする仕組みや紙の図面を電子化する機能もあります。
IT化するとむしろ非効率?
管理組合の業務のIT化を妨げている一番の原因は、インターネットやスマートフォンを使えない居住者の存在です。せっかくウエブ上で情報共有しても極端なことをいえば、居住者の中にひとりでもインターネットを使えない方がいれば紙面と併用することも検討しなくてはなりません。
これではむしろIT化することによって非効率な運営になりかねません。こうしたマンション管理組合特有の問題から、非効率な昔ながらのやり方が続けられ一部の理事の負担や管理会社の業務を増やしています。
しかし、コロナ禍の状況や、昨今の人手不足で管理員などなり手不足の問題や人件費の高騰などを鑑みれば、マンション管理組合のIT化は不可欠になってきています。
管理員がAIになる?
こうした中、 マンション管理会社の大京アステージは、「AI管理員」「AIコンシェルジュ」の年内開始を目指した実証実験をはじめています。いずれは、こうしたAIがマンションの居住者と管理会社の窓口になる時代になるのでしょう。
この記事のまとめ
昨今では、業務の効率化のためにさまざまなITツールが使われるようになってきましたが、マンション管理業界に関しても、思いがけない事態に背中を押されIT化の流れが進んでいます。効率よく理事会運営を行いたいのであれば、マンション住民側から管理会社に対してオンライン理事会を提案するのも良いかもしれません。