分譲マンションでのトラブルの発生状況
平成30年度マンション総合調査によると、分譲マンションでおきた過去1年間のトラブルの発生状況の割合は「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」が55.9%と最も多く、つぎに「建物の不具合に係るもの」が31.1%、「費用負担に係るもの」が25.5%となっています。
一方で「特にトラブルは発生していない」が23.2%となっており、ほとんどの分譲マンションで居住者間の行為やマナー等などにより何らかのトラブルが発生していることになります。マンションは一戸建てにはない共同生活特有の難しさを抱えています。マンションには多くの居住者が暮らしますので居住者のマナーなどのソフト面の他、建物や設備などのハード面などトラブルの内容は多様です。
マンションのトラブルは「生活音」「違法駐車」「ペット」
「居住者間の行為、マナー」に関するトラブルでは、「生活音」が38.0%と最も多く、次いで「違法駐車」が19.0%、「ペット飼育」が18.1%となっています。
こうした、居住者間のトラブルの原因で多い生活音については、音を不快に感じる程度には個人差があると同時に当事者にとってはきわめて深刻なため居住者間の対立に発展するケースも多く、簡単には解決できない問題です。特効薬はありませんが、最低限、管理規約等に床材の騒音基準を定めたり掲示等でマナーの遵守を啓蒙するなどの対策は必要でしょう。
しかし、居住者間のトラブルは原則として当事者同士が解決すべき問題ですので、いざトラブルが紛争にまで発展したときにどこまで理事会が介入するかは慎重に判断しなくてはなりません。また、管理会社の業務の中には、原則として居住者間のトラブルの対応については含まれていません。
管理費等の滞納については、滞納額が大きくならないうちに対応することが肝心です。毎月、理事会を実施して、管理会社の担当者(フロント)から管理費等の滞納状況については報告を受けるようにしましょう。その他、昨今では居住者の高齢化などの影響もあり、役員(理事)のなり手不足が深刻になってきました。
建物に関するトラブルの発生状況
「建物の不具合」に関するトラブルでは「水漏れ」が18.7%と最も多く、つぎに「雨漏り」が10.1%となっています。大規模修繕工事などの定期的な修繕の必要性が伺えます。
管理組合運営における将来への不安
管理組合を運営していく上での将来の不安な点についてみると「区分所有者の高齢化」が53.1%と最も多く、つぎに「居住者の高齢化」が44.3%、「修繕積立金の不足」が31.2%、「大規模修繕工事の実施」が27.8%となっています。
管理組合の抱える不安の多くはマンションの居住者の高齢化が影響しています。役員のなり手不足は全国のマンション管理組合が抱えている共通の問題です。改正された標準管理規約の中では、外部の専門家が管理組合の理事や監事(理事長を含む)に就任できるとした条項が追加されました。区分所有者の高齢化などによって役員のなり手が不足といった問題に対応するため、マンション管理士等が理事長に就任することが想定されています。
この記事のまとめ
一人が「ちょっとくらいなら」とおこなったことが、多くの人々が集まるマンションなどの集合住宅では、大きな問題に発展します。マンションは価値観の違う方が長期間暮らしている内に、時にはトラブルが起こりますし将来への不安が増していきます。特に、騒音を不快に感じる程度やペットの好き嫌いなど、受けとめ方に個人差がある問題は簡単に解決できません。こうした居住者間のトラブルは原則として当事者同士が解決すべき問題ですが、いざトラブルが起こると管理会社に解決を求める傾向があります。
しかし、実際には管理会社の業務の中には居住者間のトラブルの対応は含まれていないので、居住者間の深刻化したトラブルの解決を管理会社にお任せといきません。
そこで、理事会でトラブルの解決を目指しても、マンション運営についての専門的な知識を持っていません。そこで標準管理規約では「管理組合の運営や管理全般について、専門家に相談したり、助言、指導、援助を求めたりすることができる」と定めています。
分譲マンションで必要とされる専門家には、マンション管理士、弁護士、司法書士、建築士、税理士等がいます。専門家を上手に活用することがトラブルや不安を解決するための近道になるでしょう。
例えば、マンション管理士は、管理組合のよろず相談役としての役割も担います。理事会や管理会社では対応しきれないトラブルや問題などが生じた場合にはマンション管理士等の第三者的立場であるコンサルタントに支援を求めるのもトラブル解決方法のひとつです。