マンションの役員はボランティアでやるもの?
管理組合の役員(理事・監事)は、理事会で土日がつぶれたり、時には居住者からのクレームを受けたりと大きな負担が生じます。昨今ではこうした役員としての負担に見合う報酬を支払うのは当然という考えを持つ方も増えてきました。報酬を支払うことで、理事のなり手不足解消につながるケースもあります。
役員報酬を支払うデメリットは?
一方で役員報酬を支払うデメリットとしてあげられるのは、管理組合の追加コストの発生の他、居住者の中には「役員は報酬を受け取っているのだから仕事をして当然」という考えを持つ方がいることです。
また、役員報酬についての議論が進むと、どうせ費用負担が増えるのであれば区分所有者以外の専門家に理事は任せたほうが良いのではないかといった方向に進むケースも見られます。いずれにしても、マンション毎に事情が異なりますので、役員報酬の支払いについては、各々の管理組合でしっかりとした議論をかさねることが重要です。
マンション管理組合における役員報酬の実態
平成30年度マンション総合調査によると、マンション役員(理事)への報酬の支払いは「報酬は支払っていない」が73.3%で最も多く、つぎに「役員全員に報酬を支払っている」が23.1%となっています。「理事長のみに報酬」の1.1%と合わせると約4分の1の管理組合で役員報酬を支払っていいることになります。
国交省からも認められている役員報酬の支払い
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約においても役員が報酬を受けることが想定されています。
したがって、管理組合の役員が「管理規約・細則」の定めに従い報酬を受けとることは、何ら問題はなく、公に認められています。
実際に管理組合で役員報酬制に切りかえる場合には、現状の管理規約で報酬の規定がない場合には、管理規約変更の手続きが必要となるため総会での特別決議が必要です。後々のトラブルを避けるために「役員報酬に関する細則」として定めることが望ましいでしょう。
標準管理規約
第37条 (役員の誠実義務等)
2 役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる。
直接管理規約に報酬額を定めた場合の例
第○条 役員は、役員としての活動に応ずる以下の報酬の支払いを受けることができる。
役員報酬(年額)
理事長 ○○○○円
副理事長 ○○○○円
会計 ○○○○円
理事 ○○○○円
監事 ○○○○円
役員の報酬額の目安
役員報酬の具体的な支払い方法やその額は、細則に定めるのが一般的です。当然、役員自身で報酬額を決めることは、他の居住者からの反発を招くことになります。
役員報酬が各役員一律の場合の報酬額
役員報酬が各役員一律の場合の月当たりの報酬額の分布についてみると「1,000円以下」が30.1%と最も多く、次いで「1,000円超2,000円以下」が17.5%、「4,000円超5,000円以下」が11.7%。報酬額平均は『3,900 円/月』となっています。
役員報酬が役員一律でない場合の理事長の報酬額
役員(理事)報酬が一律でない場合の月当たりの理事長の報酬額の分布についてみると「10,000円超」が20.0%と最も多く、つぎに「2,000円超3,000円以下」が16.3%、「4,000円超5,000円以下」が15.4%。報酬額平均は『9,500円/月』となっています。
この記事のまとめ
特に理事長は、管理会社の担当者とのやり取りや書類への押印等、その負担は想像以上に重いのが現実です。その負担への対価として、理事に報酬を支払う管理組合も増えてきました。理事に報酬を支払うことは規約や総会の決議で決定することができます。
しかし、実際に報酬を支払っている管理組合は全国の分譲マンションの約4分の1程度に留まっています。役員報酬に対する考え方はそれぞれで一概にはできませんが、実際にマンションの役員は多くの時間や労力を必要とするので、それに対して報酬を支払うことに合理性はあるでしょう。
一方で役員報酬を支払うことで「理事は仕事をして当然」といった無責任な考え方をする区分所有者がでてくる危険性もあります。
報酬の額によって報酬の意味合いがかわってきます。例えば、報酬額が少ない場合には、報酬というよりもねぎらいの意味を持っている一方で、報酬額が高額すぎると役員という立場が利権化する恐れもあります。特に無報酬の管理組合が報酬制を採用する場合には慎重に議論する必要があるでしょう。
報酬を高めに設定する場合には、思い切って「専門家が理事に就任」する第三者管理方式などを検討し、外部から専門家を有償で選任することも考えられるでしょう。