管理組合での監査の実態
国土交通省の調査によると区分所有者の監事が約96%となっており、ほとんどの管理組合で監査は区分所有者がおこなっていることがわかります。現状では会計士等による外部監査は「費用負担」が大きいことや、外部の専門家による監査の仕組み自体が知られていなことから、監査に外部の専門家を導入している管理組合は極少数です。
管理組合の資産は億を超えることも
マンション管理組合も数百戸の規模ともなれば、年間の管理費や修繕積立金は億を超えることも珍しいことではありません。こうした管理組合で動く金額は、とても監事個人が責任を負えるものではありません。
管理会社に原因がある場合には、管理会社が補償する可能性はありますが、監事個人の責任が問われない保証はありません。しかし、現状では、ほとんどのマンションで区分所有者による監査がおこなわれています。
区分所有者がおこなう監査の実態
区分所有者がおこなっている監査の実際は、定期総会前に管理会社の担当者からの指示に従って、領収書や会計書類に軽く目をとおすだけといった管理組合がほとんどです。監事は管理組合においては、理事の業務執行状況を監視する重要な業務があり、標準管理規約第41条においても、臨時総会の招集権などの強い権限が与えられているにも関わらず実際には名ばかりの監査がおこなわれています。
監事の行う監査の具体的内容については、マンション管理業協会 が作成した『管理組合監査(主要項目チェックリストについて)』が参考になりますが、実際には区分所有者から選任された監事では、その全部をおこなうことは非常に困難です。
専門家による外部監査の仕組み
外部の専門家による監査には主に2つの方式があります。
- 【監事就任】専門家が監事に就任
- 専門家が管理組合の役員である監事に就任し、これまでの区分所有者による監事の仕事を専門家がおこないます。
- 【外部監査】専門家が外部監査をおこなう
- 専門家は監事にはなりませんが、監事に代わって監査業務を行います。中立公正な立場で監査を行います。
誰に外部監査を依頼する?
管理組合の監査業務は大きく分類すると「会計監査」と「業務監査」があります。この2つの監査は業務の性質が異なるので依頼すべき専門家は各々異なります。
会計監査 | 主に、総会に提出される決算書・収支報告書(案) 及び貸借対照表(案)が適正に作成されているかを監査します。 |
業務監査 | 理事会が管理規約や総会決議に従い適正に運営されているか。 計画された点検や改修工事等が適切に行なわれたか監査します。 |
会計監査は、理事会が実施した取引の正しく記帳されていることを監査するので、会計士の業務の範疇でしょう。また、業務監査については主に理事会のチェックといった趣旨ですので、管理組合の運営に精通したマンション管理士が適任でしょう。
両方を採用できればそれに越したことはありませんが、実際には費用負担の面で困難なため、管理組合がどちらの監査に重点を置くのかで判断が別れます。ある程度の規模以上の管理会社が決算書を作成していると想定すれば『小規模マンションでは業務監査』『大規模マンションでは会計監査』を重点に外部監査をおこなう専門家を選択するのが望ましいでしょう。
この記事のまとめ
監事に理事の活動をチェックする役割を期待しても、実際には「監事」と「理事」は同じマンションに暮らす住人同士の関係ですので、一般的な会社での監査役と同じような機能を管理組合の監事に求めるのは非現実的です。管理組合でも外部監査を採用すれば、組合員の監事による決算書、各種証憑をチェックするといった手間を省くことができるとともに、その監査の信頼性は大幅にアップします。
このように監事を外部の専門家に依頼するのは有効な方法ではありますが、監事を別途専門家に委託する場合には、報酬が追加的に生じるため特に小規模のマンションでは経済的な負担が重いため採用が難しいのが現実です。
なお、第三者管理方式を導入により、区分所有者以外の専門家が理事長に就任している場合には、特に第三者による外部監査が望ましいでしょう。