マンション管理適正化法が改正され来年4月から地方自治体がマンションの管理状況をチェックして、基準をクリアした管理組合を認定する「管理計画認定制度」が始まります。現時点(2021/9)では詳細は未確定ですが、認定を受けたマンションでは何らかのインセンティブが得られる仕組みが用意されます。自治体が管理状況に関与することでマンション管理レベルの底上げや中古マンション売却時の差別化を図ろうとしています。
マンション管理計画認定制度とは?
認定を希望するマンション管理組合は「管理計画」や「管理に関わる資料」を地方自治体に提出し、一定の基準を満たす場合には認定を受けることができます。認定を受けたマンションは、財団法人マンション管理センターが運営するウェブサイトに掲載されるので、マンションの住戸を売却する際に有利に働くことが期待されます。
保険料が安くなる期待も
また、損害保険会社によって、火災保険料などでも差がつく仕組みができるとされているので、管理組合にとっても具体的なメリットが得られるようです。
認定基準(案)の一部
(1)修繕その他管理の方法 | 長期修繕計画の計画期間が 一定期間以上あること 等 |
---|---|
(2)修繕その他の管理に係る資金計画 | 長期修繕計画に基づき 修繕積立金を設定されていること 等 |
(3)管理組合の運営状況 | 総会を定期的に開催していること 等 |
(4)管理適正化指針・市区独自の管理適正化指針に照らして適切なものであること |
出典:国交省「マンションの管理計画認定制度の概要」
上の表のとおり、認定基準は一般的なマンションであれば基準を満たすのは当然といったレベルのものです。したがってこの認定基準の目的は、管理不全に陥っているマンションの底上げを狙ったものと考えたほうがよさそうです。
申請手続きの流れ(案)
- 管理組合は地方公共団体に対して管理計画認定手続支援システム(インターネット上の電子システム)でオンライン上で申請をおこないます。
- 管理計画認定にあたっては、マンション管理センターが実施する講習を受けたマンション管理士が事前確認を行い、認定基準を満たすものはマンション管理センターが適合証を発行します。
- 管理組合が地方公共団体に対して申請をおこなって認定を得ます。
出典:国交省「マンションの管理計画認定制度の概要」
マンションを購入する際の指標となる?
マンションの購入を検討する際には「価格」「最寄り駅からの時間」「間取り」といったものを重要視するケースが多いでしょう。現状はマンションの購入時に「マンション管理」のことを考慮したという方はあまり聞きません。今後、認定制度がスタートして普及すれば、マンション購入時の新しい指標として活用されていく可能性があります。
マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」との関係
国のマンション管理認定制度と同時期に(一社)マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」もスタートします。「マンション管理適正評価制度」は管理組合の運営状況を「S~D」までの5段階に評価するものです。
この「マンション管理適正評価制度」「管理計画認定制度」の2制度は、併せて申請をおこなえるように調整が進んでいます。また、(一社)日本マンション管理士会連合会による「マンション管理適正化診断サービス」も同様に何らかの連携がおこなわれる予定です。
「マンション管理適正評価制度」と「管理計画認定制度」の違い
制度 | 運営 | 審査項目 | 判定 | 有効期限 |
マンション管理 適正評価制度 | マンション 管理業協会 | 約30項目 管理組合体制 管理組合収支 建築・設備 耐震診断 生活関連 | 5段階 評価 | 1年間 |
管理計画認定制度 | 地方公共団体 | 約16項目 管理組合の運営 管理規約 管理組合の経理 長期修繕計画 その他 | 認定 ○☓ | 5年間 |
出典:(一社)マンション管理業協会「マンションの管理適正評価制度パンフレット」
管理会社の業務が改善される?
認定を希望する管理組合は自らが主体となって申請すべきものですが、申請実務については現実的には管理会社の担当者(フロント)のサポートを受けることになるでしょう。
したがって、この制度がスタートした直後は管理会社の担当者も対応に追われるため、理事会等でこうした制度がスタートしたことを積極的にアナウンスしない可能性もあります。
しかし、視点をかえて管理会社側から考察すれば、自社の管理物件が100%認定を受けているとなれば、業務レベルを証明するための良い宣伝文句となるはずです。管理会社には、管理レベルを向上させるための良い機会だと捉えていただきたいものです。
まとめ
今後、管理が適切に行われている管理組合は、地方自治体に申請することにより認定を得て、そのことはウェブサイト上で外部に広く公表されます。
第三者の客観的な評価によって「マンション管理の見える化」が行われるわけです。これによって管理組合が積極的に管理業務をおこなえば、マンションそのものの評価が高まって、より高値でお部屋を売却できるようになるかもしれません。
これまでも「マンションは管理を買え」と言われ続けてきましたが、現実的には、管理に関する詳細な部分は、販売会社の営業担当者でさえも説明できないことが多く、販売価格に反映されてきたとは言えません。
この認定制度によって認定を受けたマンションであるかが差別化要因になって、それが資産価値に反映されることになれば、管理のレベルアップ、中古マンションの健全な流通活性化につながるでしょう。
懸念されるのは、この制度の利用は管理組合個々の判断による任意のものなので参加する管理組合が少ないといった事態です。
多くのマンションが参加することで初めて認定制度の価値が生じるので、認定を受けることによって得られる具体的なメリット(インセンティブ)が制度に盛り込まれることを期待します。